2014/06/23

ボスニア・ヘルツェゴビナのオシムさん

民族共存へのキックオフ
~‟オシムの国„のW杯~

6月22日のNHK総合テレビ、NHKスペシャルで標記の番組がありました。

元サッカー日本代表監督のイヴィツァ・オシム(Ivica Osim)さんと今回のサッカーワールドカップブラジル大会にただひとつの初出場国であるボスニア・ヘルツェゴビナ代表の物語です。

旧ユーゴスラビアが複数の国に分裂し、それぞれが独立する中にあって、そのひとつであるボスニア・ヘルツェゴビナはムスリム人、セルビア人、クロアチア人を中心とした多民族国家で、民族対立を続け、内戦にまでなりました。

内戦が終結した後も民族対立は残ったままで、サッカー界もそのあおりを受け、2011年、ボスニア・ヘルツェゴビナサッカー連盟はFIFAから除名されました。
そのままでは国際試合に参加することができません。

そのピンチに際しサッカー連盟をひとつにまとめ、国際社会への復帰を果たしたのに大きな役割を担ったのがオシムさんでした。というより、ほとんどオシムさんの力でこの危機を乗り越え、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表がW杯への進出を果たすまでになったのです。

番組ではボスニア・ヘルツェゴビナサッカー連盟の混乱とオシムさんの尽力による収束、サッカーボスニア・ヘルツェゴビナ代表チームの躍進と今回のワールドカップ進出への軌跡、代表チーム主将のズヴェズダン・ミシモヴィッチ(Zvjezdan Misimović)、エースストライカー、エディン・ジェコ(Edin Džeko)の生い立ちを紹介するとともに、サッカーが民族融和に果たした役割、ワールドカップ出場に沸くボスニア・ヘルツェゴビナ国民の姿を映し出した、いわばドキュメンタリーです。

私はもちろんオシムさんに会ったことはありませんし、ましてや話をしたこともなく、木村元彦(きむらゆきひこ)さんによる集英社文庫「オシムの言葉」(集英社,2008)を通じてくらいしか知識がありませんが、番組ではオシムさんの信念、オシムさんの行動を伝えてくれました。













この番組は恐らく再放送されることと思います。
今回見逃された方、敢えて見られなかった方は再放送があったら、サッカーファンでなくても一度ごらんになられるとよいと思います。

サッカーとは?民族とは?
考えさせられる番組です。

また、この機会に中高生あるいは小学生高学年の人たちには是非読んでいただきたい本を紹介します。
木村元彦さんが書かれた「よりみちパン!セ」シリーズの「オシムからの旅」(理論社,2010)です。この本では、オシムさん、ドラガン・ストイコビッチそしてサッカーについてだけでなく、旧ユーゴスラビアから内戦を経てのボスニア・ヘルツェゴヴィナの歴史にも触れられています。
民族同士の憎しみの愚かさをも教えてくれます。




















ただ、私はこれだけカリスマ性を持ったオシムさんが亡くなった後-いずれその日は来るのですが-のボスニア・ヘルツェゴビナが、再び民族抗争を起こさなくてすむのかどうかを考えると少々心もとなくなります。
それは旧ユーゴスラビアのチトー(Josip Broz Tito,  Јосип Броз Тито)大統領が亡くなった後のユーゴスラビアの混乱を思い起こさせるからです。

民族の対立で「得をする人」はごく一部です。ごく一部の特殊な人たちです。その人たちのためにしかならない対立は私たちの生活には全く持って無用のものです。

オシムさんを通して学ぶことはたくさんあります。

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